海外の反応まとめ
コラムアニメ海外の反応まとめ編集部

なぜ日本と海外でアニメの人気は食い違うのか。両方のコメント欄を毎日読んで見えた5つの構造

Why Japan and the West Never Agree on Which Anime Is Big

なぜ日本と海外でアニメの人気は食い違うのか。両方のコメント欄を毎日読んで見えた5つの構造
日本のファンも“Aura Monster(オーラお化け)”を知っててくれて、ほんと嬉しい
リゼロ4期・WEB予告のコメント欄・👍3334

日本では社会現象なのに、海外の反応は静か。海外のコミュニティは大騒ぎなのに、日本では誰も話していない。両方のコメント欄を毎日読んでいると、この温度差には本当によく出くわす。作品の優劣の話にされがちだけど、毎日見ている実感としては、好みの前に構造の問題がいくつも挟まっている。僕が翻訳作業のなかで体感してきた5つの構造を、実際のコメントと一緒に並べてみる。

構造その1。そもそも、観られる場所にあるか

いちばん根本で、いちばん見落とされるのが配信だ。どれだけ面白くても、自分の国の配信サービスに無い作品は、海外のファンにとって存在しないのとほぼ同じで。アニメの海外展開は配信権の契約で国ごとに細かく分かれているから、ある国では放送と同時に観られる作品が、隣の国では配信すらされていないことが普通に起こる。作品の中身を語る前に、まずここで大きな差がつく。

タイミングの差も効く。海外の盛り上がりの中心は、放送直後に感想を言い合う今週の話数の会話だ。日本とほぼ同時に配信される作品はこの輪に入れるけど、数か月遅れる作品や一括配信の作品は、リアルタイムの波に乗れない。しかもこの時差、待たされる側には別の地獄がある。鬼滅の映画の北米公開日が発表されたとき、上位に来てたのがこれだ。

アニメ勢の最善策は、7月に入ったらYouTubeとTwitterを2ヶ月間断つこと。日本で公開された瞬間、全員がネタバレを投稿しまくるからな
鬼滅の刃 無限城編・北米公開日発表のコメント欄・👍1253

観たい熱はあるのに、観られない期間が挟まる。その間はネタバレから逃げ回る競技が始まる。中身の話をする前に、流通の事情だけで盛り上がりの波形はここまでずれる。

構造その2。翻訳で目減りするもの、しないもの

次に大きいのが翻訳との相性だ。言葉遊び、駄洒落、敬語の使い分けから生まれる可笑しさ、方言のニュアンス。日本語そのものに乗っている面白さは、どれだけ優れた翻訳者でも完全には運べない。字幕に注釈を付ける紙幅はないし、笑いのタイミングと訳文のタイミングを合わせる制約もある。毎日翻訳をやってる身として断言するけど、会話劇とギャグは輸出で確実に目減りする。悔しいことに。

逆に、ほとんど目減りしないものもある。アクションの作画、音楽、映像演出、表情や間で伝わる感情。台詞に頼らず画で語る作品は、言語の壁を素通りして届く。日本では会話が面白い作品として愛されてるのに海外の反応が控えめだったり、映像で押す作品が海外で先に評価されたりする背景には、この何が翻訳を生き残るかという構造がある。

構造その3。あるあるが、通じるかどうか

アニメの多くは、日本の視聴者が共有している経験の上に建っている。文化祭、部活、受験、通学電車、コンビニ、夏祭り。日本の視聴者なら説明なしで頷ける場面も、その経験がない視聴者にはそういう文化があるという前提の理解から始まる。共感で笑わせたり泣かせたりする作品ほど、この参照点の差が効いてくる。妖怪や怪談みたいな下敷きも同じで、ダンダダンに花子さんが出てきたとき、日本側のコメント欄はこの一言で全部通じてた。

まあ日本一有名と言っても過言ではない怪談の主役だからなぁ…… そら強いわ。
ダンダダン・日本側のコメント欄・👍392

日本一有名な怪談の主役、の一言で日本側は全員頷く。海外側は花子さんって誰だという質問から始まって、詳しいファンが解説班を買って出る。そして面白いのは、この差が逆方向にも働くことだ。僕らには見慣れた通学路やコンビニが、海外の目には新鮮な異文化として映って、それ自体が魅力になる。家族、喪失、成長みたいな普遍のテーマを正面からやる作品が国境を越えやすいのも、参照点に頼らないからで。

構造その4。観方そのものが違う

日本には放送時間に合わせてSNSで感想を言い合うリアタイ実況の文化が根付いてる。毎週の放送がみんなで同じ時間に観るイベントになって、次回までの一週間で考察と予想が積み上がる。海外は配信でまとめて観る一気見も広く定着していて、盛り上がりのピークが視聴者ごとにばらける。同じ作品でも、話題の積み上がり方の物理が違う。

原作にどれだけ触れてるかの差もある。日本では漫画や小説の原作が身近で、アニメ化の時点で原作ファンの期待という下地がある。海外ではアニメが初めての出会いになることが多い。ただ、向こうの熱心なファンは日本での人気を続編の保証として読む技を身につけてて、薬屋のひとりごとの3期が決まったときのこのコメントには感心した。

日本での人気が凄まじいから、間違いなく原作を全部アニメ化するはず。実際それだけの価値がある作品だしな
薬屋のひとりごと3期ティザーのコメント欄・👍5224

日本での人気が、続きの供給を保証してくれるという読みだ。海の向こうの人気を、自分が観たい続編の担保として眺めてる。この視線があること自体、人気の食い違いを一枚面白くしてると思う。

構造その5。ミームという増幅装置

最後はコミュニティによる増幅だ。海外では印象的なシーンや台詞がミームに加工されて共有されて、作品の知名度が雪だるま式に広がることがある。大事なのは、ミームになりやすいかどうかは作品の完成度とは別の軸だということ。切り取りやすい一場面、真似したくなる決め台詞、表情のインパクト。部品の共有しやすさを持つ作品は、本編を観てない層にまで名前が届く。

しかもミームは翻訳の壁を越えるのが速い。言葉より画で笑わせるから、国境がない。冒頭に掲げたコメントはリゼロ4期の予告に付いたもので、ナイフ片手に階段を上るスバルの一場面から海外で生まれたオーラモンスターというミームが、逆輸入で日本のファンにまで届いたことを海外側が喜んでる図だ。ミームが海を渡って、渡ったこと自体がまた話題になる。増幅装置というのはこういう動き方をする。

食い違いこそが、この仕事のご馳走

配信という流通、翻訳という変換、文化という前提、視聴スタイルという習慣、ミームという増幅装置。5つ並べたけど、どれも作品そのものの価値とは別の話だ。だから海外で人気だから優れてるとか、日本でしか人気がないから劣ってるとか、そういう単純な優劣の話には絶対にならない。

そして白状すると、両側のコメント欄を毎日読んでる身として、いちばん楽しいのはまさに食い違ってる瞬間だったりする。日本では静かだった回に海外が沸いてたり、僕らが見落としてた魅力を海の向こうが先に見つけてたり。同じ作品を観てるのに感じ方がずれる。そのずれの中に、文化の違いを覗き込む楽しさが全部詰まってる。次にどこかで温度差を見かけたら、この5つを思い出しながら味わってみてほしい。ちなみにその温度差が特に美味しかった日は、だいたいこのサイトの記事になってます。

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