コラムアニメ
進撃の巨人はなぜAttack on Titanなのか。アニメ英語タイトルの読み方
Why Shingeki no Kyojin Became Attack on Titan: How Anime Titles Cross the Border
海外の反応を訳してると、作品が英語タイトルで呼ばれてて一瞬どの作品か分からないことがある。進撃の巨人はAttack on Titan、鬼滅の刃はDemon Slayer。かと思えばワンピースはOne Pieceのまま、無職転生はローマ字のMushoku Tenseiで通じる。この違いは何なのか。毎日この名前の対応表を頭の中で引きながら仕事してる側から、英語タイトルのパターンを整理する。これが分かると、海外の反応は一段読みやすくなるので。
パターン1。そのまま使う。One PieceとNARUTOの平和
いちばん分かりやすいのは、原題がもともと英語や固有名詞で、そのまま海外でも通じるパターンだ。ワンピースはOne Piece、NARUTOはNARUTO。人名や造語のタイトルも翻訳のしようがないからそのまま使われる。海外の反応を読んでても迷子にならない、いちばん平和なグループで。訳す側としても、このグループの夜は平和です。
パターン2。直訳する。そして進撃の巨人の含みは運びきれなかった
進撃の巨人のAttack on Titanは直訳グループの代表格だけど、実はファンの間でしばしば話題になるズレがある。原題は、巨人が進撃してくるとも巨人へ進撃するとも読める含みのあるタイトルなのに、英題は巨人への攻撃という一方向に倒れて見える。物語が進むほどこの含みが効いてくるだけに、海外の考察好きの間では定番の語り草だ。一方で君の名は。のYour Name.みたいに、直訳がそのまま美しく決まるケースもある。直訳は分かりやすい反面、原題の二重の意味までは運びきれないことがある。毎日翻訳やってる身として、これは本当に耳が痛い話で。
直訳で運びきれない場合は、思い切った意訳になることもある。有名なのは千と千尋の神隠しの英題Spirited Away。神隠しという日本語ならではの概念を、英語のspirited away(さらわれる)という言い回しに置き換えた妙訳として、翻訳の話題では定番の例だ。そして直訳の英題が浸透すると、今度はその英題を土台にしたジョークが生まれる。鬼滅の劇場版の予告には、こんなコメントが付いてた。
豆知識:『無限列車』とか『無限城』って呼ばれてるのは、無限の数のアニメーターが働いてるからなんだぜ。これで色々と説明がつく
Infinity TrainにInfinity Castle。無限という直訳が英語圏の共通語彙になってるからこそ、無限のアニメーターというジョークが通じる。タイトルの翻訳がうまくいったかどうかは、それでジョークが作れるかで分かる、というのが僕の持論だ。
パターン3。訳とローマ字の併記、いいとこ取り型
鬼滅の刃の公式英題はDemon Slayer: Kimetsu no Yaiba。英訳とローマ字原題を併記するハイブリッド型だ。英語圏の新規ファンには意味の分かるDemon Slayerで入口を作りつつ、原題の響きも捨てない。いいとこ取りの形式で、同じ形を取る作品は少なくない。無職転生のMushoku Tensei: Jobless Reincarnationは逆の並びで、ローマ字が主、英訳が副題。ファンの間では単にMushoku Tenseiと略されることが多くて、ローマ字題がそのまま愛称として定着した例だ。
パターン4。略称が公式になる。国境をまたいで同じ答えに着地する話
日本のライトノベル原作にありがちな長いタイトルは、海外でもそのままでは呼びにくい。そこで起きるのが略称の公式化だ。この素晴らしい世界に祝福を!はKonoSuba: God's Blessing on This Wonderful World!として、日本のファンが使ってた略称がそのまま看板になった。Re:ゼロから始める異世界生活も、海外の公式表記はRe:ZERO -Starting Life in Another World-だけど、ファンは日本と同じくRe:Zeroと呼ぶ。長いタイトルほど、日本と海外で同じ略称に収束していく。ファン文化が国境をまたいで、別々に、同じ答えにたどり着く。この現象、僕はかなり好きだ。
逆流もある。日本の作品の中の外国語が、本国に刺さる
名前は日本から海外へ流れるだけじゃない。日本の作品が使った外国語の名前が、その言語の母語話者に届いて反応が返ってくる逆流もある。転スラの悪魔たちにスーパーカー由来の名前が付いてることについて、イタリアの人からこんなコメントが来てた。
(スーパーカーの名前だってのは分かってるんだけど)イタリア人としては“白のテスタロッサ”ってのがキツい……testa=頭、rossa=赤、つまり直訳“赤い頭”なんだよ😂 あと“紫のウルティマ”も「最後の者」って意味だし……ヴァイオレットが不憫すぎる😅😂
白の悪魔の名前が、イタリア語では赤い頭。日本の視聴者が格好いいスーパーカーの名前として聞いてる音が、母語話者には直訳で刺さってる。僕らが英題のズレを面白がるのとちょうど鏡写しの現象で、名前が言語をまたぐときのこぼれ方は、どっち向きでも起きるんだと教えてくれる。
海外の反応を読むときのコツは、別名の存在を覚えておくこと
作品が海外の配信サービスに並ぶとき、出版や配信に関わる各社が公式の英語タイトルを付ける。検索のしやすさ、ハッシュタグでの呼びやすさ、店頭やアプリでの見つけやすさ。タイトルは作品の住所だから、英語圏の生活動線に合わせた表記が必要になるわけだ。そして面白いのは、公式がどう名付けても、ファンは呼びやすい形に縮めていくこと。Attack on TitanはAoT、Demon SlayerはDS。こうした略語を見かけたら、それは日常的にその作品の話をしてる人たちのサインでもある。
読み方のコツはひとつだけ。英語圏では別の名前で呼ばれてる可能性がある、と頭の片隅に置いておくことだ。初めて見る英題に出会ったら、まずローマ字読みしてみる。分からなければ直訳を考えてみる。今日のパターン1から4のどれかに当てはめれば、たいていの作品名は正体が割れる。逆に、鬼滅やリゼロみたいな日本語側の略称がローマ字で海外コメントに登場することもあって、名前の対応表は双方向で育っていく。当サイトの作品ハブやタグは日本語名で引けるようにしてあるので、英題しか分からない作品の逆引きにも使ってみてほしい。名前の対応が頭に入ると、海外の反応は一段読みやすく、そして一段面白くなるはずなので。
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