海外の反応まとめ
コラムアニメ海外の反応まとめ編集部

海外は作画を褒める、は本当か。訳したコメント11,705件を全部数えてみた

Does the West Really Talk About the Animation? I Counted All 11,705 Comments I Have Translated

海外は作画を褒める、は本当か。訳したコメント11,705件を全部数えてみた
旬が核爆級のパンチを繰り出すと、作画のほうもレベルアップする
俺だけレベルアップな件 旬vsバランのリアクション動画のコメント欄・👍5,581

7月の終わりに、日本と海外ではコメント欄の性格が違うという話を書いた。毎晩どっちも読んでいる僕の体感の話で、あのときは数字を一つも出していない。今日はその答え合わせをする。うちのサイトに溜まった対訳済みのコメントは、8月23日の時点で11,705件になった。海外の反応が7,379件、日本のファンの反応が4,326件、記事にすると525本ぶん。全部に語彙の辞書を当てて、何を語っているかで機械的に分類してみた。結果を先に言うと、僕の体感は半分当たっていて、いちばん自信があったところが見事に外れていた。

4件のうち3件は、機械には何の話か分からなかった

やり方はごく単純だ。泣いた、笑った、鳥肌、作画、ずっと待ってた、怖い、わかる。この7つに対応する言い回しを辞書にして、コメント1件ずつに当てていく。判定は日本語訳と原文の両方にかけるので、片方の言い方が辞書から漏れてももう片方で拾える。うちのコメントは全部が対訳なので、この二度がけができる。

11,705件のうち、どのバケツにも入らなかったのが8,774件。ちょうど75%だ。最初にこの数を見たときは正直へこんだ。毎晩読んでいるものの4分の3は、感想ですらないということになる。実際そうなんだと思う。キャラの名前を呼んでいるだけの一行、次回の予想、ただのボケ、前のコメントへの返し。コメント欄の地肌はそういうもので埋まっている。

辞書はしくじりもする。たとえば下の一言は共感のバケツに入っている。みんな、という書き出しを共感の合図として拾うからだ。読めば分かるとおり、これは共感じゃなくてただのボケだ。

みんな忘れないでほしいんだけど、喫煙するとタバコの長さがめちゃくちゃ短くなるからね
スーパーの裏でヤニ吸うふたり 公式トレーラーのコメント欄・👍900

なので今日の数字は全部、その気持ちを持った人の割合ではなく、その気持ちを言葉にした人の割合だと思って読んでほしい。ここの区別が、このあとの話に全部効いてくる。

大喜利会場のはずの海外が、笑ったと言わない

7月に僕が書いた話の中心はこれだった。海外のコメント欄は大喜利会場で、日本のコメント欄はこたつ。書いたときは1ミリも疑っていなかった。数えたらこうなる。笑いの語彙が出てくるのは、海外のコメント欄で7,379件中217件、率にして2.9%。日本のコメント欄は4,326件中197件で4.6%。日本側のほうが1.5倍以上、はっきり笑ったと書いている。

しばらく考えて、これは体感が間違っていたというより、数え方が体感を裏切ったんだと思うようになった。ボケる人は、自分のボケに笑ったとは書かない。大喜利会場でいちばん大事なのは自分が笑うことじゃなくて、次の一手を出すことだ。だから会場の空気がいくら笑いでも、笑いの語彙は増えない。逆にこたつの部屋では、みんな遠慮なく感想を言う。笑った、かわいい、あーもうだめだ、と。うるさいのは海外で、言葉にするのは日本、と言い直すのが正しかった。

泣いたと書くのは、日本のほうだった

涙の語彙も同じ向きに出た。海外のコメント欄が170件で2.3%、日本のコメント欄が173件で4.0%。件数はほぼ同じなのに母数が違うので、率で1.7倍の差がつく。海外の反応の動画は絶叫やガッツポーズが画になるぶん、感情の総量は向こうが多そうに見えるんだけど、書き残す量は日本のほうが多い。

だから序盤にレゼの通勤風景をねっとりと描写する必要があったんですね(涙目)
チェンソーマン レゼ篇の日本のコメント欄・👍6,806

この一言が僕は好きで、泣いたとは一度も言っていないのに涙目とだけ書いてある。しかも泣いている理由が、あとから伏線の意味に気づいたからだ。訳していて手が止まるのはいつもこっち側で、感情を叫ぶ文じゃなくて、感情の出どころを一行で説明してしまう文にやられる。

作画の話は13件に1件。ただし作品で桁が変わる

ここが今日の本題だ。海外は作画を褒める、とよく言われる。11,705件のうち作画や映像や音楽に触れているのは873件で7.5%。13件に1件。方向で割ると海外のコメント欄が8.2%、日本のコメント欄が6.2%で、たしかに海外のほうが多い。ただ差は思っていたより小さい。

面白いのは作品ごとに割ったときで、ここで桁が変わる。俺だけレベルアップな件は94件中25件が作画の話で26.6%、つまり4件に1件。怪獣8号が25.6%、ワンパンマンが21.1%と続く。逆にワンピースは518件集めて5.0%、めっちゃカメレオンにいたっては632件で2.2%しかない。45件に1件だ。

つまり作画は、海外ファンがどこでも褒めるものじゃない。作画で殴りに来た作品の下でだけ語られる。ワンピースのコメント欄が埋まっているのは考察と伏線と誰が強いかで、絵の話をする隙がそもそも無い。海外は作画を褒める、というのは国民性じゃなくて、そういう作品を僕らがそういう作り方で出しているという話なんだと思う。

ちなみに日本のコメント欄で作画の話がいちばん多かったのは天幕のジャードゥーガルで、75件中16件の21.3%だった。原作の絵柄がそのまま動くという珍しい作品で、日本の視聴者も絵の話をせざるを得なかったんだと思う。

トマトスープの独創的な絵柄がそのまま動いているのが凄い
天幕のジャードゥーガル1・2話の日本のコメント欄・👍109

その部屋で、どの一言が報われるか

最後に、語られた量ではなく、いいねの付き方を見た。中央値で比べる。海外のコメント欄はコメント1件あたりの中央値が44いいねで、バケツ別の最高は、ずっと待ってた・子供の頃から好きだった系の77だった。作画が53、共感が33。原作を何年も追ってきたという告白が、あの部屋ではいちばん報われる。

日本のコメント欄は中央値31で、最高は笑いの64。作画は23で全体より低い。そして最下位は、作品の外の事情を語ったコメントの14だった。配信がいつだとか、このチャンネルがどうだとか、円盤の売上がどうだとか。海外のコメント欄では同じ種類の一言が、たまに万単位で伸びる。日本のコメント欄では、たぶん誰も興味が無い。

この最下位が、今日いちばん腑に落ちた数字だった。日本のコメント欄は、作品の中の話しかしていない部屋なんだ。7月の僕はそこをこたつと呼んだ。悪くない例えだったと思うけど、こたつの本質は距離の近さじゃなくて、外の話を持ち込まないことだったらしい。

この数字は、僕の訳を一度通っている

白状しておくことがある。辞書は日本語訳にも当たるので、僕の訳し癖がそのまま数字に混ざる。原文がちょっとしんみりしているだけの英語を、僕がぐっときたと訳したせいで涙のバケツに入った一件は、確実にある。ただ救いもあって、両側の訳を書いているのは同じ僕だ。傾きが同じ方向にかかっているぶん、海外と日本を比べる用途では、そこまで嘘にならないと思っている。

だからうちの記事には、訳と一緒に原文をそのまま置いてある。数え方が気に入らない人は自分で数え直せるようにしておきたい。同じ集計を作品ごとに並べたランキングも常設していて、こっちは毎週、証拠に出すコメントが入れ替わる。いいね順のランキングなら誰でも作れるけど、何を語られたかの順位は、たぶん11,705件ぶんの訳を持っている人にしか作れない。数を数えて自分の体感が半分外れていたと分かる作業、思っていたよりずっと楽しかったので、また溜まったらやる。

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